「トレジャー・プラネット」感想~宝より気になるのは2人に芽生えた絆

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ただでさえロマンがある海賊や宝探しの物語。その舞台を宇宙に移し、ワクワクしないわけがない!

そんな本作ですが、実は人間ドラマの方がかなり気になります。恋愛要素は少なく男同士、父と子のような絆がメインです。

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基本情報

原題は「Treasure Planet」。2002年11月27日公開(日本では2003年7月12日)。

ディズニー長編アニメーション映画第43作目。原作はロバート・ルイス・スティーブンソンの小説「宝島」。

監督はジョン・マスカーロン・クレメンツ(共に「リトル・マーメイド」「アラジン」「モアナと伝説の海」などの監督)。2人は制作や脚本にも携わっている。

あらすじ

15歳のジム・ホーキンスは、ある日不思議な黄金の金属球を手にする。それは、莫大な財宝が眠ると言われる《宝の惑星‐トレジャー・プラネット‐》への宇宙地図だった。幼い頃からトレジャー・プラネットの伝説に魅せられていたジムは、故郷モントレッサ星に母を独り残し、宇宙船レガシー号で遙か銀河の彼方を目指して旅立つ。超新星の爆発、恐ろしい海賊たちの襲撃、次々と迫りくる危機を仲間たちと力を合わせて勇敢に乗り越えていくジム。そして、ついにトレジャー・プラネットに着陸するが、実はこの星には想像を絶する秘密が隠されていたのだった…!

公式ブルーレイ&デジタル作品紹介
公式の予告動画がなかなか見つからず、劇中歌(フランス語版)にしました。

登場人物

※ストーリーの核心には触れないようにしていますが、ネタバレになり得る情報が含まれています。ご注意ください。

ジム・ホーキンス

本作主人公の15歳の少年。小さい頃から”トレジャー・プラネット”の伝説に夢中で今でもその存在を信じている。人間(多分)。

8歳でソーラーボード(帆が付いた空飛ぶスケートボードみたいなやつ)を作るほど賢く、優しさや勇気もある。

しかし幼い頃に父親が家を出ていったことで心に大きな傷を負い、その後非行を繰り返して母を困らせている様子。才能や感情を持て余しているようにも見える。

そんな未成熟な彼が冒険の中で成長していく所やジョン・シルバーとの関係の変化に胸が熱くなります。

ジョン・シルバー

今回の旅でコックを担当している船員。右目・右腕・右足がサイボーグのエイリアン(何がモチーフなんだろう)。

一見豪快で陽気なおじさんだけど、何か隠しこの旅に参加している様子。自分の下に付いたジムにだんだん父性にも似た感情を持つようになるが…。

外見はただの悪役おじさんだけど、右腕のギミック、役者さんの演技、キャラクターの感情を示す表情などがどれも魅力的で、彼から目が離せなくなります。

アメリア船長

今回の旅で船長を務める、的確な指示と軽い身のこなしがかっこいい女性エイリアン。猫がモチーフ。

アローを信頼しているが、他の船員に胡散臭さを感じている様子。ジムやドップラー博士にもなかなか心を開かないので観ているこちらも彼女を完全に信頼していいのかドキドキしました。

私としてはまさかの展開を迎えるキャラクターの一人。

ドップラー博士

天文物理学者のエイリアン。モチーフは犬。サラとは古い知り合いのよう。

宇宙探検を夢に持ち、ジムが手に入れた地図を見るなり今回の冒険の出資者となりジムに同行する。意外なほどの行動力と資金力。

一見臆病で非力なキャラクターだけど、旅が進むに連れてどんどん頼もしく感じました。今回の旅で成長したのはジムだけではないみたい。

そのほかの人達

  • サラ・ホーキンス…ジムの母。小さな宿「ベンボウ亭」を一人で切り盛りしながらジムの非行に心を痛めている。苦労人すぎる。
  • アロー…同行する一等航海士。岩のような見た目に似合う真面目でお硬い性格のようで、仕事も完璧にこなす。アメリア船長からの信頼も厚い。後半忘れられてしまったようで悲しい。
  • スクループ…船員の一人でやたらとジムにつっかかり、ジョンにも反抗的な姿勢を示す。「ヘラクレス」にこんな顔の敵がいた気がする。
  • モーフ…小さいゼリーのようなエイリアン。変身が得意でいたずら好きの性格はいかにも話を面白くしてくれそう。誰も便利な彼を道具のように扱わない点では優しい世界。
  • ベン…不時着した惑星で出会ったオンボロロボット。とにかくお喋りで賑やかな彼。吹き替えはやはり山寺宏一さん。物語後半に登場するけど、全編にいたらさすがに鬱陶しいかも。一部の記憶がないようだが…?
  • ビリー・ボーンズ…海賊エイリアン。カメっぽい。追われていた自分を助けようとしたジムにトレジャー・プラネットへの地図を託す。「サイボーグに気をつけろ」と言い残した。ということはやはり…。
  • ナサニエル・フリント…伝説の大海賊。彼の想像を絶する宝はトレジャー・プラネットに眠ると言われていて、ジムは幼い頃からこの話に憧れている。

感想

※ストーリーの核心には触れないようにしていますが、ネタバレになり得る情報が含まれています。ご注意ください。

宇宙を飛び回る宝探し

前々作が深海に潜って冒険する物語でしたが(アトランティス)、本作は海賊の宝探しでありながら海ではなく宇宙が舞台。

冒頭はお決まりの始まり方なのに、人間もエイリアンも共存し海賊が宇宙を飛び回るような世界観、今とは違う技術力、今回の旅の背景、幼少期のジムの様子などをこれでもかと盛り込んであり一気に引き込まれました。

旅の仲間だったり敵だったりするエイリアンたちは動物や虫などをモチーフにしていて可愛らしすぎず、冒険は楽しいこともあれば過酷なこともあり、ディズニー映画の中では甘さ控えめ。

地図のギミックにワクワクさせられたのでトレジャー・プラネットの発見やお宝を見つけるまでの仕掛けもあっと驚くようなものに違いないと期待してしまいかしたが、後半はテンボよく展開していくのであっさりしていてちょっと物足りなかったかな?

やっぱり映画としての作りも後述のジムとジョンの関係に重点を置いているのかなと感じました。

手描きアニメーションとCGアニメーションの融合

序盤でジムがソーラーボードに乗り飛び回るシーンはスピード感とスリルがありワクワクする映像で、これから始まる旅への期待が高まります。

宝の地図のギミックやホログラムも素敵。あのホログラムは近い未来でアトラクションなんかに取り入れてほしいです。

こういったスピード感や迫力などを出すCG技術を駆使したシーンに対し、キャラクターなどは手描きで描かれていて温かみがあるところが好き。

この作品も実写映画化の波に乗りフルCGになったらそれはそれで面白そうですよね。リアルなモーフはいかに可愛らしさを残しつつリアルにできるのかが気になります。

宝の在り処より気になる人間関係

なんと言っても見所はジムとジョン・シルバーの間に芽生えるまるで父と息子のような絆。

冒険中における2人の変化は劇中歌で表現していて、本編以外でも様々なやりとりを交わしながら絆が出来上がっていったのだと想像できます。

特にジョン・シルバーの変化に関してはもっともっと見たかった!宝のためならビリー・ボーンズを死に至らしめるような彼も最後には財宝とジムとの二者択一を迫られる展開になります。なぜそんなにジムが大切になったの?ただ一緒にいるうちに父性が芽生えたの?息子を失った過去でもあるの…?

その他のキャラクターたちもその見た目や立場から敵か味方かすぐには判断できない感じ。アメリア船長にしろモーフにしろベンにしろ、最後までジムの仲間なのか否かで私はひとりドキドキしながら観ました。

1.5時間では短すぎる?

広大な宇宙を股にかけた宝探しと人間同士(?)の絆の形成を同時に描いているためか、どうしても時間が足りないと感じてしまいます。

ジムの父はどうして出ていってしまったのか(彼は冒険者でありその血が流れているジムも一ヶ所に留まることが出来ない質だったということ?)も知りたいし、今回はたまたま宝の地図を手にしスポンサーもいましたが自らの情熱と行動力で冒険に出るジムも見てみたい。

前半にしかいない、後半にしかいないキャラクターも好きになってきた(愛着を感じ始めた)ところで出番終了なのがちょっとさみしいです。

ラストは全て収まるべきところに収まったようなハッピーエンドなのにまだ物足りない、もうちょっと観たいと思ってしまう何かがあります。

あとがき

映画を観て感想を書いた今、原作が気になって仕方がないです。「宝島」、どの程度まで原作に沿っているのかな?映画では描かれていない設定もあるのかな?読んでみなくては!

やはり男性ファンの多い作品みたいですが、プリンセス映画好きの私もしっかりと楽しめました。